SONY MDR-M1ST

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Diary*2020年10月13日(火)

以前から気になっていた「SONY」の『MDR-M1ST』を購入しました。

MDR-M1ST全景(1)

もともとは法人限定として1989年に発売され、1995年にはマイナーチェンジを経てパーソナルユースとしても供給されるようになった『MDR-CD900ST』。長年、音楽制作における原器のような役割を果たしてきました。

その後継として目される『MDR-M1ST』は、ハイレゾ音源に対応したほか、ケーブルの着脱が可能でバランス接続にも対応しています。また、部品の耐久性も向上しているとのこと。

ちなみに、本来は業務用ということで、どちらも保証期間はなく、修理はすべて有償となります。自分で修理するのもアリ‥‥ですが、半端な技術で直そうとしても、逆にトドメを刺すだけなので、ふつうは丸ごと買い換えですね。

僕は『MDR-CD900ST』も『MDR-M1ST』も持っていないのですが、高音寄りと言われる「audio-technica」のヘッドホンをメインに使っていることから、以前より、業界標準の音というのに興味がありました。

で、上記のどちらを購入するか迷ったのですが、まずは今後の標準になるかもしれない『MDR-M1ST』が先かな、と思い、こちらを購入しました。

パッケージは非常に簡素。大きさも、ボックスティッシュを2つ重ねた程度しかありません。

パッケージ ラベル パッケージ内容

内容物は、ヘッドホン本体、アンバランス接続ケーブル1本(ステレオ標準プラグ、長さ3.0m)、簡易的な取扱説明書、の3点のみ。やはり音楽スタジオを前提としたパッケージ内容ですね。

ヘッドホンスタンドに掛けてみると、こんな感じです。

MDR-M1ST全景(2)

飾りっ気がまったくないですね。音だけにフォーカスして、余計なものはすべて削ぎ落としてしまった感じです。

「MADE IN JAPAN」の刻印があります。さすがに部品のひとつひとつに至るまですべて日本製ということはないでしょうが、日本の技術者により品質管理や検査が行われているということで、信頼性は高いでしょう。

ヘッドバンドの伸縮部には目盛りがついています。長さを合わせやすくて、ありがたい。

MADE IN JAPAN ヘッドバンドの目盛り

身につけてみた感じ、イヤーパッドが小さめですね。いちおうアラウンドイヤーの分類なのでしょうが、オンイヤーぎみになっています。

側圧はほどほどの強さ。イヤーパッドが小さめなこともあって、何時間もつけたままでいるのは、ちょっとつらいかもしれません。

音の方は、思ったより聞きやすいな、というのが第一印象です。モニターヘッドホンということで、エッジの立った音を想像していたのですが、そこまで厳しくはありませんでした。あまりエッジを立てると聞き疲れしやすくなって、都合が悪いのでしょう。

しかし、リスニング向きかというと、そこまで音が丸いわけではありません。音楽鑑賞が目的なら、あえてモニター用の本機を使わずとも、素直にリスニングに向いた他のヘッドホンを探した方が、満足度は高くなるのではないかと思います。

もうひとつ印象的だったのが、低音です。これは僕の耳が低音控えめの「audio-technica」に慣れていることも影響しているでしょうが、『MDR-M1ST』の低音はかなり強く感じられました。底深く太い低音がドンドンと響きます。僕にはちょっと重すぎるかな‥‥。

一方、高音や中音については、ことさら脚色されているわけではなく、かといって、おろそかにされているわけでもありません。可もなく不可もなく、な感じです。

音のバランスはニュートラルに取ってくるかと予想していましたが、実際は、低音を少し強めに押し出す調整になっているようです。

モニターヘッドホンとして求められる音の解像感(分離感)は、とても優れていると思います。3万円~3万5千円ほどで販売されているので、価格的にはミドルクラスの位置づけになります。しかし、音の解像感で評価すれば、僕の感覚で言って、もっと上のランクに感じます。

細かい音もけっこう拾い上げている印象で、また、他の音に潰されにくいように思います。そもそもの目的に、音を聞き分けることも含まれているので、本機の開発にあたって、こだわったポイントなのだろうと想像します。

これだけ解像感が高いと、情感が失われやすいと思うのですが、本機の場合は、なかなかに保たれています。情感も音楽制作にあたっては大事な要素であるのでしょうが、実際に、解像感と情感を両立させていることは、すごいと思います。

全体として、外観は質素ですが、音は充実しています。ただ、低音がやや強めなのが、モニターヘッドホンとしてはどうなのだろう?と、少し疑問もありました。

さて、ここからはリケーブルの話。

『MDR-M1ST』の付属ケーブルは、本体同様、見た目にはかなり安っぽい印象を受けます。実は中身がすごかった‥‥!なんてことがあるかもしれませんが、少し調べてみた限りでは、どんな線材が使われているのか、情報は見つかりませんでした。謎。

とりあえず、『MDR-Z1000』の付属ケーブルと互換性があるようなので、これを『MDR-M1ST』につなげたら音が良くなるんじゃないか?と安直に考え、取り替えてみました。

『MDR-Z1000』の付属ケーブルには、「7N-OFC」と呼ばれる高純度無酸素銅(純度99.99999%)の線材が使われています。そう聞くだけで、無条件に期待してしまうのですが‥‥。

MDR-Z1000付属3.0mケーブル MDR-M1STをリケーブル

実際に音を聞いてみると、ちょっと微妙でした。

まず良いところとして、ノイズが減っています。そのおかげで、音の雑味が少なくなり、音色がわかりやすくなった印象です。

他方で、音のエッジがぼやけたようになりました。耳に優しくリスニング向きになったのかというと、そういうわけではなく、単純に、ぼや~っとした感じで聞こえます。こちらはマイナス要素です。

一長一短ですが、どちらかというと、マイナス要素の方が強いように感じました。ケーブルの品質が良いからといって、ヘッドホンとの相性も良いとは限らないようです。

以前は、『MDR-Z1000』の付属ケーブルを単体で入手できたようですが、現在は流通がないようです。

※型番は、1.2mが『1-838-511-11』、3.0mが『1-838-513-11』。

よって『MDR-Z1000』そのものを購入するしかなさそうですが、『MDR-M1ST』のリケーブルだけを目的に『MDR-Z1000』を購入するまでの価値はないように思います。

ただ、『MDR-Z1000』それ自体はとても良いヘッドホンです。『MDR-Z1000』を楽しむついでに、『MDR-M1ST』のリケーブルを試してみるなら、良いのではないでしょうか。

また、公式な発表はないものの、『MDR-Z1000』は生産を終了したとの話があります。今後、ショップの在庫がなくなっていくにつれて、だんだんとプレミア価格になっていくと思われるので、興味のある方はいまのうちに確保しておいた方が良いでしょう。